第一回風前会おまけ

主宰の香罹伽です!

そんな感じでスタートした第一回風前会、いくら決め事が多いとは言え、丸々3時間も取っていたらそりゃ余るんですよ、尺が。

 

勿論、余ることも計算の内。

これから風前会では、決め事や毎月の担当発表、提出予定の作品の校正などを盛り込んでいくのとは別に、そんな余った時間をお楽しみ程度の実演執筆に充てようと思っています。

 

第一回から、早速やらせてもらいました。

今回の内容は「リレー小説」

安直な実演かもしれませんがまだ初めて見る顔の人たちも各々いたので、腹を探っている今の状態の時こそ一旦やってみたかったんです。

しかも!今回のリレー小説はがっつり縛りありです。

 

ルールとしまして、

・一人目の人は、スマホアプリからランダムでお題を選び、それに沿って「お題となっているワードを使わずに」書く。

・次の人は、前の人の文章からお題を予測し、それにそって同じくお題であるワードを挙げずに書く。

・更に次の人も同様に前の人の文章からお題を予想して書く。ただし、見れるのは「自分の直前に書いていた人の文だけ」。

・制限時間は一人10分。

と、伝言ゲームみたいなものになるように設けてみました。

 

最初にランダムで出たお題は「目の色」。そこからスタートさせた作品が、こちら。

 

小さいころから、白と赤のそのコントラストが好きだった。

 

別に右の意識なんてちっとも無ければ梅干しはむしろ嫌いだ。そういうことじゃない。

 

白い身体にあの赤い目。澄んでいてして決して明るくはない、光に透かして初めて、その軽やかな血潮を知らされるような、そんな瞳。――ん?今更何を言う。ウサギの話だよ。

 

とにかく、僕は小さいころからウサギが好きなんだ。あの目をずうっとのぞき込むのが好きなんだ。

 

見ているとね、いや、別に吸い込まれはしないよ。目が合って、視線を返されて、またその視線を返す。そんなことを繰り返しているうちに、いつかあの素敵な赤が僕にも写ってくるんじゃないかってワクワクゾクゾクするのがたまらないんだ。昔は割と本気で思ってたんだよ?

 

でも写らないんだ、僕の瞳は黒、君のは赤。それは変わらない事実のまま平行線を辿るだけ。悔しくなって、それに抗うつもりでカラコンなんかしていた時期もあったよ。何色かって?(香罹伽 梢)

 

青色だよ。茫々たる大海の青、なんてたいしたものじゃあない。安っぽい、小汚い、アスファルトの上で生ぬるく薄汚れてゆく、そんなちゃちな色だった。

 

今にして思えば、単なる反抗心だったのかもしれない。誰に対して、何に対して、と言われたら、言葉に詰まって曖昧な笑みを浮かべてしまう類の、ほんの小さな対抗意識。

 

そんなものを抱えていながらも、君と相対すると、いつの間にかその赤色に目が吸い寄せられてゆく。艶やかな白色と、ほんのりと濡れた赤いそれに、喉が鳴るような興奮を覚えるんだ。

 

青のコンタクトレンズは、僕の意識の象徴だったのかもしれない。(出汁殻 ニボシ)

 

「どうしたの?」

 

 真っ赤な唇がにっこりと曲がる。青い視界の中で、それだけが強烈な個性を放つ。

 

「カラコンって、ちょっと不便です」

 

「きれいな瞳ですけれど」

 

 僕は曖昧に笑った。彼女は決して染まらない。彼女の唇は決して奪えない。

 

 奪ってしまいたい。彼女は恋の対象ではない。ただ、その染まらない、何処までも自分を保ち続ける唇を支配したい征服欲。対抗心。その衝動に押されて、僕は彼女の手を掴んだ。

 

 彼女が戸惑ったように体をゆすった。(水煙)

 

「…なにか?」

 

一転、強張った唇の動きに、思わず目線を反らした。

 

「あ、いや…いや。」

 

手を握ったら怖気づいた?

 

なにか罪悪感でも芽生えた?

 

それらしいような気もするし全然間違いな気もする。瞼が言い訳に向かって羽ばたいた。

 

すると、一回目をつぶって、もう一度開いたときに、もう一度僕の視界が笑顔に支配されなおしてしまった。じいっとこちらを眺めて、また真っ赤な唇がきれいな弧を描いている。

 

「…なにか?」

 

「本当に、綺麗な色ですね」

 

自由を取り戻した唇はぞっとするほど鮮やかだった。

 

目線はいや増して反らせなくなったけれど、手をもう一度引き戻すつもりにはなれなかった。

 

引き寄せられちゃったら、意味ないんだよなあ。

 

これがあなたへの答えなのかな、と、もう抵抗せずにただ見つめていた。

 

開き続けた目は乾いて、砂が入って、カラコンには辛い、涙で少し歪んでいく視界に、その赤だけが鮮烈だった。(チューハイ)

 

見事に曲がりに曲がりました。因みに想像していたお題は「目の色」→「コンタクトレンズ」→「カラコン」→「目線」とずれていきました。

 

でもこれ、別にお題をきちんと読み取れっていうものではないので。この人はどういう作風で、どういうベクトルから人にものを伝えようとして、どういうアングルから人の文を読み取るのかっていうことを、簡単な執筆を通して直に触れ合えてもらえたらなと思って企画したものなので。

 

そして結果、こんな文を連ねていく人たちだと言う事が分かりました。はい。

これからがとても楽しみですね!

 

以上、今月のおまけでした!